奥利根本谷 |
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[報告者] 高久明夫 釣行日:2002/8/30〜9/1 メンバー:小鷹 哲 、渡辺 肇 、平江 誠 高久明夫、田宮貴男、上田 勉 |
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例によって、入山祝いと称して宴会が始まる。キツい釣行になると分かっていながら、どうして出発間際まで呑んでしまうのだろう。いつものことであるが・・・。 身支度を終え、 6:30 に出発。強い日差しの下、林道を歩くこと 3 時間半、やっと尾根への登り口である小沢に着いたのは 10:00 を回っていた。既にここ迄で、かなりの体力を消耗してしまっている。
平江さんは、今回新調したウェーディングシューズが馴染まず、踵に靴擦れを起こしてしまった。平江さんにとっては、出だしから辛い旅の始まりとなった。沢を詰めながら、目の前に立ちはだかる尾根を見上げると、「えー、ここ登るの!?うっそー!!。奥利根はやめて違う川にしようか?」との声がチラホラあがる。
やがて、沢が枯れて徐々に尾根に近づいてくると、根曲がりの藪がキツくなってきた。それにしても、ウェーディングシューズを履いての藪こぎはキツい。足は滑り、根曲がりが体に絡みつき、なかなか前に進むことができない。 『山越えはスパイクシューズ必携!』を痛感した。やがてバカ藪は背丈程にもなり、視界は真上だけという状況となった。目指すべきピークの方向すら分からない。小鷹さん曰く、「昔( 18 年程前)来たときは、ここらの草木は腰までしか無かったんだけどなー、こんなにキツくなかったぞー、まいったなー」。尾根に出るまでに、バカ藪の中でかなりの時間を彷徨ってしまった。 やっとの思いでピークに立ったときには、もう既に午後 4:00 を回り、陽はかなり西に傾いている。ピークから今釣行に参加できずに、会社で仕事をしている瀬畑Jrに電話を掛けてみる。すると「この時間でピークに居るんじゃ、ビバークも考えた方がいい!」とJrが電話の向こうで焦っている。もしかして、今日は水も無く夜を過ごすことになるのだろうか・・・。皆の気持ちに段々と焦りが出てきた。
尾根を降り、根曲がりに足を取られながら斜面を滑り落ちる。もう踏ん張るだけの力が残っていない。しかし、何とか気力だけで枯沢を降り、水が湧き出ている所まで来るとホッとした。沢の下降半ばには、辺りはすっかり暗くなってしまい、小鷹さんの「今日中に本流まで行くのは無理だな。適当な所でテン場ろう」の言葉に全員同意。目指す本谷は翌日に持ち越すことにした。
沢に出てから 1 時間ほど降りただろうか。その間 2 つの滝を懸垂で降りる。疲れが頂点に達した頃、左岸にやっと小さな平地を見つけた。残った力を振り絞って天幕を張り、皆で焚き木を集める。下に敷いたブルーシートにどっかりと腰を落とすと、狭いと思ったテン場でも結構快適に思えてきた。そして「お疲れさーん!」と乾杯する間もなくヘナヘナと横になった途端、誰もが曝睡してしまっていた。 翌朝は軽い朝食を済ませてテン場を片付けると、目的地である奥利根本谷を目指す。 1 時間程下降すると 2 日目にしてやっと本谷に辿り着くことができた。ここが天下の奥利根!一同万歳!!『近くて遠い渓』とは聞いていたが、身をもってそう思った。
深緑色をした出合いの淵は、いかにも大物が棲んでいそうだ。早速上田さんが竿を出し、仕掛けを投じるや否や尺物が掛かった。続いて、小鷹さんがその上の淵で尺上を立て続けに上げる。「おー、これは居るぞー!」と、気持ちがワクワクしてきた。しかしこの時からである。『上田さんが最初に釣り上げると、他の人は総じて貧果に終わる』というジンクスができてしまっのは・・・。そんなこととはつゆ知らず、皆ウキウキしながらテン場を設営し、一段落したところで奥利根に乾杯!した。
大休止後に、「裏越後沢出合まで降りてそこから釣り上がろう」との意見で一致し、一同本流を下る。程なく出合に到着し、大淵にて釣り大会となった。皆で交替に大淵を攻める。そして田宮さんの番がきた。毛鈎を落とすと、すぐさま奥利根のイワナが「ゴツン!」と来た。が、何としたことか、テンカラの名手田宮さんが大物をバラシてしまう。この後、田宮さんの竿が弧を描くことはなかった。
出合で暫く休憩し、「もうそろそろ良いかな?」と本流を変わる変わる釣り上るがアタリがなく、あっという間にテン場に着いてしまった。『天下の奥利根』と大いに期待してきたが、思ったほどに魚影は濃くない。下った時も魚が走らないな、と感じてはいたが・・・。
テン場にて昼食を摂った後、今度は本流を釣り上がる。しかし「此処ぞ!」というポイントでアタリがない。小鷹さんが「昔来たときは、泳ぎながら釣り上がったんだ。」という淵やゴルジュは皆小石で埋まってしまい、難なく魚止めの滝に着いてしまった。「最後の滝壷、俺に釣らせて!」と肇さんが竿を出すと、いきなり「ガツン!」ときた。竿が弓なりになり、魚がなかなか上がってこない。一同は、肇さんとイワナとのやり取りを固唾を呑んで見守る。そして肇さんが慎重に足元にイワナを寄せた。「これは、デカイ!!」。今釣行最大の 38aに肇さんの顔がほころんだ。そして奥利根本谷の大イワナを写真に納め、肇さんはためらいもなくイワナを流れに戻し、今釣行の納竿となった。後はテン場に戻って呑むだけだ。 イワナを寄せた。「これは、デカイ!!」。今釣行最大の 38aに肇さんの顔がほころんだ。そして奥利根本谷の大イワナを写真に納め、肇さんはためらいもなくイワナを流れに戻し、今釣行の納竿となった。後はテン場に戻って呑むだけだ。
テン場に戻ると、それぞれが役割を分担し、夜に備える。誰が指示するでもなくテキパキとこなしていく。そして、準備も一段落した頃に夕闇が迫ってきた。河原で焚き火を囲み、瀬音を聞きながら仲間と酒を交わす。見上げれば満天の星空、このマッタリした時間がたまらなく好きだ。キツい思いをして奥利根まで来た甲斐があったと思う。酒がまわって酔い心地となり、焚き火の暖かさで何時の間にか寝入ってしまった。暫くして夜の冷え込みに目が覚め、慌ててシュラフに潜り込んだ。 そして最終日。今日は来たルートを帰るだけだ。この場を後にする寂しさと、来たときの辛さを思い出すと少し気が重い。テン場を綺麗に片付けて 9:00 に出発。いきなりキツい沢を詰め上がり、高度を稼いで行く。途中、胸突八丁のガレ場登りにはヒヤヒヤさせられた。足を滑らせれば、一気に奈落の底に落ちてしまう。やっと尾根に出て、ピークに立った時は正午を回っていた。 眼下に望む奥利根の渓は雄大で険しく、万年雪渓があちこちに見え、正に名渓と呼ぶに相応しい。「あそこを歩いたのか」、と思うと満足感がこみあげてきた。反面、「自然の雄大さに比べ、人間なんてちっぽけなものだ」と、改めて感じさせられる。宇都宮渓遊会に入会し、 1 年目にしてこの渓に来れたことは、極めて幸運なことなんだろうと思う。
尾根を伝って沢を降り、林道に着いた時は午後 4:00 を過ぎていた。残すは平坦な林道歩きだけなので、かなり気が楽になった。が、しかし先は長い。平江さんはとうとう靴擦れに耐え切れず、サンダルに履き替えて林道を歩き始めた。途中、陽もすっかり落ちて真っ暗になってしまい、ヘッドランプを点けながら”呑んでは歩き、休んではまた呑み”を繰り返し、なかなか車に辿り着けない。全員クタクタになってやっと着いた時は夜の 8:30 を回っていた。 下山祝いを済ませ、帰路の途につく。キツい旅ではあったが、天候にも恵まれ、奥利根の大自然を存分に満喫でき、思い出に残る 3 日間であった。 《あとがき》 会の釣行に参加し、初めて感じたことがある。釣り好きが集まっているにもかかわらず、呑んでいても釣りに関する技術的な話は殆ど無い。なんでだろう。大物を釣ったからといって自慢することもなく、ボウズだったからといって落ち込むこともない。なんでだろう。でもそれは、その後の釣行に参加することにより段々分かって来た。 |
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