1999 The Fishing ロケ釣行 [黒部川支流弥太蔵谷

 
[報告者] 平江  誠
実施日:1999/7/15 〜 19
メンバー:瀬畑雄三 ・佐藤芳信 ・ 田宮貴男
大出 学  ・ 平江  誠

 
 6月中旬から延びに延びた『ザ・フィッシング』のロケがやっと決行となった。
 今回は黒部という初めてのロケーションのため、私の自宅まで瀬畑さんが迎えに来てくれた(10時)。 栃木組は9時30分に集合し出発したとの連絡が田宮氏からあった。
 今回のメンバーは何と言っても主役の瀬畑雄三さん、今年から無くなった源流部会の会長であった佐藤芳信さん、酒豪でテンカラ名人の田宮氏、下戸だがヘツリの達人大出氏、そして私の5人と、撮影班が3人の計8人である。 撮影班は前日泊で現地集合となっている。

 瀬畑さんの車に同乗して圏央道に乗ったのが10時30分。 関越道長岡JC経由の北陸道朝日ICまで行く予定だ。 快適に飛ばしていくが、関越道が群馬に入った辺りからポツポツと小雨が降り出した。 そのうえ沼田から水上間が通行止めとの掲示が出され、「まさか」と思っているうちに大粒の雨が降り出し雷鳴が轟いている。 みるみる視界が失われていき、時速50km〜80kmで何とか走行し、やっと赤城高原SAまで辿り着いて小休止とする。 通行止めも月夜野〜水上間となり「どうしましょうか?」と瀬畑さんに尋ねると「国道で行くしかないなー」と言われ、朝の到着は到底無理だなと観念した。

 サービスエリアに到着後、すぐに田宮氏から携帯に連絡が入り、赤城ICのパーキングエリアにいるものの、やはり「通行止めでどうするか?」との問い合わせだが、とりあえず赤城高原SAまで来てもらうことにした。 10分程で到着し、揃って車から降りて大雨の中サービスエリアの建物へと向かう。 中に入ると偶然にも“東京マタギ”こと深瀬信夫氏一行を発見し、挨拶を交わす。 『アウトドア教室』の一環で渓流釣りらしく、生徒含め8人の大所帯だ。 道路は相変わらず通行止めなのでのんびりと休憩にする。
 深瀬さん一行は笠堀大川に行くとのことだが、やはり教室らしく女性も居ればおじさんや若者も見受けられ、バラエティー豊かな構成となっている。

 黒部方面の天気は明日から上り調子で良くなるそうで、現地は殆ど降ってはいないらしい。 雨もじきに上がるだろうと話していると、30分ほどで通行止めは解除となった。
 「お先にー!」と言って、深瀬さん一行がまだ止まない雨の中へと出て行った。 すかさず我々も後に続く。 水上辺りまで降っていた雨も関越トンネルを過ぎると殆ど気にならなくなった。 この調子なら何とか朝までには到着できそうだ。

 長岡JCから北陸道に入り、途中給油をして予定通り朝日インター下車としたが、その後コンビニで買い物を済ませ、県道8号線を右折しT字路を左折するところを右折してしまい、又元の8号線に戻ってしまった。 気を取り直して標識どおりに進み、今度は間違いなく宇奈月温泉の駅に到着した。 初めての黒部だったが意外に開けた駅前に感動は無く、皆が寝ると言う中、田宮氏と二人で飲み始めた(4時30分)。
 駅前のパラソルのついた二人には不似合いのテーブルで焼酎や日本酒を飲む。 酔いも回り結構いい気分になった頃、瀬畑さんの車が何処かへと走って行った。 多分ダム工事で使っている林道が通れるかどうかを確認に行ったのだろう。 申し訳ない(5時40分)。


 15分ほどで戻ってきたが、撮影班の宿まで迎えに行くとのことで、宴会を終了として車に乗り込む。 旅館はすぐに見つかり撮影班はまだ宿にいるようだ。 待っている間に私は助手席でひと寝入り。 撮影班を乗せ、事前に下見をしておいた河原まで運ぶ。 ここで荷物の仕分けや着替えを済ます。 共同装備や食料を詰め、さらにバッテリー等の撮影機材を入れる。 今までの経験には無い重量のザックを担ぎ、尾根への取り付き口まで歩く。

撮影機材を積んだザックを背負って尾根へと登る
切り立った崖沿いの道を慎重に進む

 この弥太蔵谷は本流の出合いから1kmほどゴルジュと滝が続き、撮影班を連れてはとても沢沿いに歩けた代物ではないらしく、素直に巻き道を行くことにするが、急斜面の登りに早くも息が上がる。 40分程で道も平らになるが、殆ど崩れていてロープが張ってあるような危険な道を、機材を手渡しで運びながら慎重に進む。 足元から遥か100m以上も下の切り立ったゴルジュの中を強烈な勢いで沢が流れている。 これでは空身でも遡行は困難を極めるであろう。

 ボロボロで枠しか残っていない2mほどの鉄の橋を2つ渡り、2時間30分程で何とか沢の出合いに到着。 ちょっとしたカットをカメラに収め、大休止。 そこから30分程で旧取水口跡の堰堤が現れる。 快適に遡行を続けるが、途中瀬畑さんが“赤マムシ”を見つけて捕まえ、牙から毒を絞り出そうとしている。 今回は毒は出なかったが、何とそのマムシを田宮氏に向かって放り投げた。 慌てた田宮氏は奇声とともに2mほど飛び、退きつつ翻筋斗もんどりを打った。 瀬畑さんは「ダイジだー(栃木弁で大丈夫の意)」と一人で大笑いしていた。 また投げられてはたまらんと皆が警戒したが、さすがにそれはなかった。

途中、瀬畑さんが赤マムシを見つけた
沢の出合いに向かう
重たいザックを背負っての渡渉
テン場はもう直ぐ

 悪場もなく延々と瀬の続く河原を歩きやっとテン場到着(3時30分)。 焚火用の薪を集めるところやテン場設営の様子を撮影し、その後全員で語り合っているところを遠くから撮ったが、話しが聞こえないのをいいことに中身は下ねたオンリーでとてもテレビには放送できない内容だった(瀬畑さんの胸元にピンマイクが付いていたような気が?)。

今回のテン場とした河原
瀬畑さんは山菜採りに・・・

 今日は一度も竿を出していないのでテン場の周辺を釣ってみたが、餌釣りの私には20cmほどのイワナ1匹しか掛らなかった。 テン場の裏に山菜を探しに行った瀬畑さんの話によると熊が今までここに居たようで、蟻の巣を壊して食べたばかりの跡があり、そこいら一帯の草がなぎ倒されて歩き回った後が無数に見られることから「ここは熊の巣だ」と言う。 熊は逃げてしまったらしく姿は見えないものの、何だか薮に入るのが恐くなる。

 着替えを済ませ、飯を炊く。 そのうち乾杯が始まり宴会に突入だ。 撮影班は酒を飲まないらしく、早くも食事を済ませ寝る準備をしている。 例によって田宮氏と二人焚き火を囲んで飲み続け、折角の骨酒も飲め無くなるほど酔いつぶれてしまった。 田宮氏は定位置の焚き火のそばで寝てしまい、何度起こしても微動だにしない。 仕方なく薪を大量にくべておき、寝ることにした。 時間は不明


瀬畑さんが山菜をテンプラに
山菜のテンプラ
私(左)と今回同行した大出君(右)
そして田宮氏(左)

 朝は瀬畑さんの「起きろー!!」の掛け声で起こされたが、 既に飯が炊かれている。 何と釣りまでしてきたらしく、良型のイワナをキープしていた。

今回のテン場とした河原
朝日がテン場に差し込む

 今日は−瀬畑さん一人が源流で釣りをする−というシチュエーションで撮りたいらしく、他の4人は荷物持ちだ。 今日の昼飯は“イワナ寿司と素麺”だと言うので6合の飯を酢飯にして持っていく。 予定では上流の二股上のゴルジュを抜け、魚止めの確認をするらしいが、何せ撮影班3人とも源流は初めてらしく、何処も彼処も珍しがって撮るため、一向に距離が伸びず殆どが持ち時間であった。 あまりに退屈で、最初の二股で佐藤さんと田宮氏と私の3人で本体と別れて右の沢へ釣りに行った。 渓相は申し分ないのだが意外に魚影は薄く、たまに釣れてくるのも20cm前後のリリースサイズばかりだ。 40分ほど釣り上がると巨大な雪渓に行く手を阻まれた。 辺りは冷気で覆われ白くもやが立っている。

雪渓下の靄にて
(撮影ドロガメ田宮)

 餌釣りの私には一向にあたりが無かったが、雪渓手前でなんとかキープサイズを釣り上げた。 ここで納竿として戻る事にする。 空身なので駆け足で10分ほどで二股到着。 ふと左の沢を見ると50m前方で瀬畑さんが竿を振っている。 そこは5mほどの滝になっていてそこで瀬畑さんが36、7cmのイワナを釣り上げたらしい。 ラッキーなことにカメラが掛かった瞬間を撮っていたらしく、この場面はテレビで見ることができそうだ。 この滝を瀬畑さん、田宮氏、私の3人で登り、20mテープで全員及び機材を引き上げた。

あまりのスローペースにうんざりの私
(撮影ドロガメ田宮)

早速、実釣開始
可憐な花が出迎えてくれた
ポイントを覗う瀬畑さん
実釣開始後すぐさま岩魚が掛る
弥太蔵の♀イワナ
滝の右岸を直登して行く
滝を上がった左岸に咲いていたミヤマカラマツ
菅笠に止まるトンボ
弥太蔵のイワナが毛鈎を咥えた
魚体も綺麗な弥太蔵のイワナ
滝壺で大物が掛る
滝壺で上がった尺2寸
尺2寸のイワナと瀬畑さん
尺2寸イワナのアップ

 時間も12時を回り、そろそろイワナ寿司用にキープしなければいけないのだが、こんな時に限って魚が釣れない。 釣れるのは“コッパ”ばかりだ。 とうとう時間も1時を過ぎ、滝の手前で“イワナ無しのにぎり”を食うことになった。 どうしても寿司が食いたくて餌竿を出し、滝の上下で何とか2匹を釣ってイワナ寿司を食べることができた。 酢飯の舎利しゃりが少々固かったものの、素麺は瀬畑さん特製のイワナで取ったダシで、大変旨かった。

 時間も2時を回り先を急ぐが、如何いかんせん撮影で時間が掛かりすぎ、結局ここからがゴルジュの核心部で魚も濃いと思われる手前でタイムアウト(4時30分)。 私と田宮氏と大出氏でその上を釣ってみたが、今迄とは打って変わって魚影は濃く、足元から走ったり、淵を覗くと3、4匹泳いでいるのが見える。 やはり釣り場はここからだ。 しかし何故か餌竿には掛からなかった。(餌のせい?やはり腕のせいか?)

厳しいゴルジュを突破する
ゴルジュの上流でイワナがヒット
魚影は濃くなったが・・・ 型は少し落ちた・・・

 田宮氏と大出氏が食事の支度をするということで、先に帰ることになった。 残りの3人は撮影班のお守りをしながらのんびりと戻る。 途中何度もカメラを持つという私の申し出に、かたくなに拒否を続けるカメラマンは、結局最後までカメラを離さなかった。 テン場到着6時。 薪を拾い、飯の支度をして又また宴会となった。

 陽も沈み、焚火の灯かりに照らされて瀬畑さんへのインタビューが収録された。
 その中の「なぜ源流に入るのか?」との質問に対する瀬畑さんの「価値観というものは人が入って(介在して)初めて生まれるものである」との回答に大いに納得させられた。

 宴会も縮小され、最後まで残ったのはやはり田宮氏と私だった。 夜半の雨でテントに逃げ込み、寝ている皆にはかなり迷惑をかけたようだ。 就寝3時

 翌朝は雪渓を撮りたいという撮影班の要望に、二股右側の沢に案内することにした。 佐藤さんと大出氏は昼飯の支度とテン場の撤収で残ることになった。
 1時間弱で雪渓に到着。 これなら早い時間に帰れると思ったら大きな間違いで、それから撮影に2時間を要し、結局予定通りの11時テン場帰着となった。 撮影の合間に雪渓の上流の様子を見に行ったが、巨岩のゴーロ帯で落差が3〜5mほどで階段状になっていて一気に高度を上げている。 イワナも何匹か見ることができたが、釣り場としては殆ど終わりのような感じであった。
 少し早い昼飯を食い、テン場を撤収し帰路につく。12時45分

 旧取水口までは1時間30分、小休止の後踏み跡を辿って本流まで。 途中ロープを張られた鉄の橋で、気も緩んでいたせいか、ロープに遊びが多すぎて体が振られ思わず転落しそうになる。 慌てて足を絡め、前にいた佐藤さんに助けを求め何とか這い上がった。 下は殆ど垂直の崖で落ちたら命はなかっただろう。 落ちなくて本当によかった。

 その先では大きなカモシカが2頭、踏み跡から5m辺りでクズの芽を食べているのを見つけカメラに収める。 暫く見ていたが動じる様子も無く最後まで私達を見送ってくれた。

 この辺りから黒部のダム工事や線路が見え始め、「戻ってきたなー」と実感させる。 ここからは一気に下りで草や木に捕まりながら慎重に降りて行く。 黒部本流を徒渉して車止めまで。 着替えを済ませ、スタッフの用意してくれた温泉に浸かり3日間の汚れを落とし疲れを癒す。 暫く休憩して解散とした。(5時)

 黒部名物?の“ますずし”を土産に買って、車中で食しながら朝日インターまで、瀬畑さんの平均140km/hの運転で、ノンストップで圏王道入間インターまで(9時30分)。


【編集後記】

 この様子だと殆どテレビには映りそうも無い感じだが、かなり良い映像が撮れていると思います。 オンエアーをお楽しみに。しかし機材は重く、釣りも満足にできなかったのでストレスを酒で発散させました(二日で二升)。 ロケはもう懲り懲りだ。
でも源流は最高だ!! 今度は釣りだけで行きたいものだ。

放映日 8月9日(月)PM10:30 TV東京(12ch)
ザ・フィッシング お楽しみに!!



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