Fishing2006釣行記 素晴らしき渓への旅
素晴らしき渓への旅
 
  
[報告者] 本宮和彦
釣行日:2006/5/5、6
メンバー:小池卓、瀬畑孝久、本宮和彦
 
 
 
 
 
 今や国民の休日の代名詞ともなりえた新緑の期。仕事を終え毎日の晩酌がてらのメールチェック。
 開くと通り一片のメールの中に一通の「釣行」の文字を見つけた。

 その日は意外にも早々に訪れ、心はやる私たちが向かう先は下野の山岳信仰ゆかしきとる沢。
待ち合わせの宇都宮へ到着したのは、釣りにしては余裕がある午前9:00。そこで孝久さんと同行し、今市の小池さん宅へと向かう。先日の小百川キャンプ以来の小池さんとの再会である。あの時は多勢の中の一人だったため、うまく打ち解けられなかったと勝手に思い込んでいたが、そうとは露知つゆしらず今回の釣行にお誘い頂き、尚も色々とご指導頂けることとなった。

 この時期の幹線道路はどこも渋滞続きでうんざりするが、さすがそこは小池さん。裏の裏は表と云うつまらない問答は無視して、びっくりするほど早く入り口の林道へ辿り着いた。そこからは貸切り同然の登りを、唸りながら我が愛車が3人と沢山の酒と食材を積んで登って行く。 

 沢に掛かる橋を渡り、今夜の幕営地へと到着。辺りは例年に比べ、まだ季節が遅れているようだと小池さんが話す。確かにテン場の近くにあったタラの芽は、蕾みがまだ固そうであった。
 到着後、早速テン場の設営に取り掛かる。今回初めて渓遊会として泊まりで釣行するのだが、手馴れた手つきに呆気あっけにとられ、何も手伝えないまま完了となる。少々恥ずかしい思いが今後の釣行に影響するとは、この時知る由もなかった。

 「よし!じゃあ行こうか!」小池さんの掛け声を待つように林道を歩き始める。途中すたれた山小屋を確認後、この日の入渓点に到着。滝の落ち口に既に着いている小池さんを目指し、小岩の頭を踏み行く最中「あっ!!!」――痛いのより先に恥ずかしい気持ちが先に出て、周りをキョロキョロする有様・・・。(自分が悪いんでしょ!)

 到着するや孝久さんの姿が見えない。左岸を大きく高巻き、滝下へ特大の大物を狙いに行ったとの事。さすがはDNAを受け継ぐだけあるなぁ・・・と感心しながら竿にラインをつなぐ。無垢でいる筈の源流のイワナたちも、つたない私の釣技ではアタリをとることさえ困難である。ここぞ!と云うポイントでは必ずと云って良いほど毛バリを枝先に掛けてしまい滅々めつめつとする。(渓魚ではなく渓枝をターゲットにすれば誰にも負けないのだが・・・)

春まだ早い苔むす美しい流れ

 そんな中、同行した小池さんの竿が次々としなる。その度に小池さんは「次は本宮君の番だ!!」と励ましてくれる。その度ラオウを前にしたケンシロウのように、闘気を漂わせ次のポイントに向かう・・・筈が。(北斗の拳見てくださいね)
 本来狙うべきポイントよりも前を狙ってしまい、アタリをとることさえままならないまま時間だけが過ぎていく。滝下を探っていた孝久さんも追いつき、3人で好ポイントを狙っていく中、両先輩が「良し!いいポイントだ!ここは居るぞ!!」元来プレッシャーと云うものに滅法弱い私は、その言葉を聞いただけで竿をたたみたくなる心境であった。
 その度に「それは云っちゃダメッス!」と一頻ひとしき抵抗するものの、残念ながら中々釣果に結びつかない。

小池さんのテンカラ竿が次々と撓る

 滝が連暴するポイントに差し掛かったその時、私の3.5mのテンカラ竿が一頻ひとしき大きくしなった。
 「・・・!!!」声にならないまま竿を立てると、その“大物”は魚体をくねらせながら淵の中を近づいてくる。
 「ついにオレも!」と思いかけたその瞬間・・・・・今まで加重のかかった竿と利き腕は、虚しくも竿の自重とラインの重さに変わっていた。
 ケンシロウがリンの連れている子犬に変わった瞬間である。

好ポイントを狙う私

 そんな中、滝壺で小池さんがこの日一番の大物を釣り上げた。実測尺二寸!!!さすがは小池さんである。
 私であれば歓喜興々のところ、実に紳士的に「本当は本宮君に釣らせたかったんだよ」と小池さんの一言。その言葉が宇都宮渓遊会なんだと勝手に思い、入会したことを実感した出来事であった。(私も誰かに云える日が来るように!)
 途中からテン場まで一人で釣らせて頂き、子犬であった私にも小さいながらも自然繁殖で生を受けたイワナたちが姿を見せてくれた。

小池さんが滝壺で釣り上げた尺二寸のニッコウイワナ

 テン場へ着くと、私の釣果を聞いた二人が自分のことのように喜んでくれて、キンキンに冷やしたビールで乾杯となり、以後は本来のケンシロウへと変貌する私であった(笑)。小池さんのエピソードに吹き出し、孝久さんの想いに感嘆。その夜は星空が素晴らしく、星座が分からない位のキラ星たちに見守られながらの就寝となった。


 翌日も天気予報通りの快晴!今日は魚止めを目指し踏み跡を辿り、行き着いた先は40メートルはあろうかと云う絶壁。残念ながらこの沢の主は、ケンシロウの闘気におののき姿を現さなかった(ハハハ・・・)

左岸の沢は山肌の途中から湧き出していた

 テン場に戻り、マッタリとした至福の時を過ごす。さっきまでは気がつかなかった薄雲がいつしか早い流れに変わり、厚くいつ降り出してもおかしくない空模様が3人を街の喧騒けんそうへと追いやることになる。

 テン場を撤収し、二日間お世話になったささやかな炎を見届けるなか、孝久さんが満面の笑みの中で一言。
 「本宮君!釣行記よろしくね!!」
 だから云ってるじゃないですか!プレッシャーはダメだって!!

(ほんぐう かずひこ)
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