Fishing2007釣行記 夏の訪れ
夏の訪れ 
 
  
[報告者] 本宮 和彦
釣行日:2007/6/2〜3
 メンバー:齊藤敦、阿部光延、大塚八朗
 本宮和彦
 
 
 
 
   6月の声を聞き、会の恒例行事となった”根曲がりたけ採り兼ボッカトレ”を楽しみにしていた。
 しかし、ぎりぎりになってやはり今年も根曲がりの採取場所が今ひとつ芳しくないようであり、ここは思い切って”プチ源 流”へと名前を変え、行き先をリーダーである齊藤さんのホームでもある朝日山塊三面川支流をゲレンデに沢山の山 菜&ちょっとのイワナ釣りをしようとメンバーを募ると会のホームページBBS常連の4人での釣行が決定した。

  集合場所の福島飯坂ICへ向う車中では運転席に栃阿部氏(以降阿部サン)、助手席には先日某蕎麦屋さんで飼い 犬と名前を間違えられてしまった大塚氏(以降八ちゃん)、そして後部座席には釣欲のかけらすら薄れてしまっている 私(本宮)の3人が東北自動車道を一路北へと阿部サンのフォレスターを走らせていた。
  途中迷うことなく福島市齊藤さん宅へ到着。いやはやナビゲーションと云う名の案内人は電話番号ひとつで何百キロ も離れた家の前まで連れて行ってくれる。これからの不便さを楽しみに入る山を思いながら便利な文明の利器をあり  がたく感じる。この矛盾さが楽しさの一端を担ってくれているのであろうか。
  深夜の到着後、簡単な挨拶を済ませ荷物を齊藤さんのエスクードに積み替えいざレッツ・ゴー!
 軽快に栗子峠を抜け深夜のコンビニで翌日の朝食を調達。そこから小国、三面へと向う道中齊藤さんには悪いが関  東3人組は遅い晩酌を始め、峠を抜け月明かりの林道車止めに着く頃には真夜中だと云うのに、声は大きいは、小便 は近くなるは、八ちゃんは犬に間違われるは(あっ、これは関係ないか)齊藤さんを交えてのの車内宴会で夜明けを  待った。

  周囲が明るさを見せ始めると野鳥たちが歓迎の序章を奏で、はるか眼下の蒼い流れは太く深くそして眠気に襲われ た私を魅了していった。
  すっかり夜も明け早々に着替えを済ませると共同装備をパッキングする。いつもであれば寝坊の原因であるウィスキ ーを持参する私も今回は田宮支障お気に入りの超高級焼酎をザックに忍ばせいざ出陣。
  林道沿いの木々が夜露に濡れ重いザックを背負う私たちの荒い呼吸を少しでも軽くしてくれるように、私たちはその 木々に導かれ林道を後にする。ブナの倒木をまたぎ、細い枝の強さを確かめながら齊藤さんの後を付いていくとそこに は小さいながらも存在感のある”道祖神”が祭られていた。
 「こういう風習は大切にしないといけないなあ」と齊藤さんの一言。4人で手を合わせこれからの2日間の安全をお祈り し、急な下り斜面を清冽な流れを目指しひたすら下っていく。




太古の森をしばし進む

  ようやく沢床に下り着くと重いザックを下ろしての小休止。両側の斜面には食べごろのウルイやアブラコゴミ、ウド、ミ ズナなど菜食主義者ではないが山菜食主義者である私の食欲を掻き立てる食材の宝庫である。
 今夜はテンプラにしようか、それともおひたしにしようかなんて考えながら遡行を始めると齊藤さんの
 「誰かすぐ竿出せっかい?」と釣りスタートのの合図。
 早速ザックの脇にテンカラ竿を挿しておいた私がトップバッターとしてポイントを覗う。流れる毛ばりを追うイワナは見え るものの中々針掛かりしない。業を煮やした阿部サンがエサ竿を取り出してトップを変わる。
 すると、釜の深みから良型のイワナを引きずり出した。その後もポンポンと釣り上げるがなぜか必ず私に薄笑い顔を見 せる。と云うより”どうだい?”と自慢しているようにも見える(それは私のヒガミであろうか・・・)


蕗の葉に気がつかない私


  八ちゃんも釣り上がるがどうも毛ばりには掛かりが浅い。
 しばしのやりとりを繰り返した後
 「八ちゃん!エサ釣りやってみっかい?」と私が促すと「よ〜し!やってみよっかなぁ〜〜」
 とまんざらでもない様子。阿部サンの竿を借りポイントを狙い、大石の脇の深みにエサを送り込むとすかさず”ゴツゴツ” とあたりが。ゆっくりとアワセをくれ釣りあがってきたのは黄色い腹をした居付きイワナ。
 「おおぉぉ〜!!」と本人以上に周りが驚く。「いや〜。楽しいっすね〜!」八ちゃんも満足そうであり、この世から一人 フライフィッシャーが減った瞬間を目の当たりにした。

妙にエサ竿が似合う

  途中、微妙なヘツリと残置ロープに助けられ高度を稼ぐと穏やかな流れのそばに今夜の寝床となる幕営地はあった 。
  無事到着を祝いすぐにでも乾杯したい気持ちを抑え、今宵の暖を取るべく方々に薪を集めに散々する。程よく集まる と着替えももどかしく乾杯!矢継ぎ早に干されていくビールを沢の冷たさが追いつかなくなる頃、私の超高級焼酎の登 場と相成った。齊藤さんと八ちゃんはMY GLASS を持参しておりすこぶる旨そうだ。
 そこに焼酎を注ぎ沢の天然水で割る。こんな贅沢を当たり前のように飲み干していく。
 「いやぁ〜!うんめぇなぁ〜」
 誰からとなく出る言葉にしばし皆がうなずく。



  昼食を準備してくれた齊藤さんのレシピには”山菜のテンプラ”と”日本そば”とあり、途中採取した山菜のここでの活 躍にこれまた驚かせられる私であった。アブラコゴミとシドケのテンプラにひれ伏し。茹でたての沢の冷水でしめた日本 そばにおののき、またまた焼酎を煽ってしまうこの心地よさは下界での憂いや煩わしさを忘れるには余りある味わいで あった。

「いやぁ〜〜、うんめぇなぁ〜」

  それでは!と、テンバ上流の流れへ出かけてみるとポイント毎にイワナが泳いでいるのが見える。3mの滝を右岸か ら巻くと4mの滝に出会う。その落ち込みに毛ばりを打ち込むと岩陰の深場から二匹のイワナが毛ばりを銜えようとし  た瞬間、私のテンカラ竿を弾くように立てる。するとそのポイントからは型は小さいが斑点鮮やかなイワナが姿を見せ  た。
 「それはリリースだなぁ!」とみんなが促す。食べたい訳ではないが何故か不思議な感覚を感じしばらく浅瀬でそのイ ワナを眺めた。

               我が毛ばりを銜えた愛しいイワナさん



 日も傾き釣りあがってきた沢をテンバ目指して急いで駆け下りると、そこにはすでに齊藤さんが夕餉の支度を始めてお り、急いで着替えを済ませ座に着く。
  ここからは大量に持ち込んだ酒と新鮮な山菜が夕闇に溶け込みアルコールの酔いとともに全てが混濁していく。
 「そろそろ寝っかぁぁ?」
 「そうっすね!」 何気なく時計を見るとまだ夕方の5時であった。昨夜からの寝不足もあり早々にシュラフへ潜り込み、 深い眠りへと落ちていく。。。

 


  会社にある私の机の引き出しが開かない夢で目が覚めた。


 焚き火のそばでは齊藤さんと八ちゃんが何やら楽しそうに焚き火に薪をくべている。
 夢と現実の判別がついていない私は焚き火のそばにいる2人が夢なんだと思い込み寝返りを打ち浅い眠りを探してみ る。しかし、どうやら夢と現実は逆であったようだ。なぜなら布団で寝ているはずの私の枕元には青々としたシドケが  鼻腔をくすぐっていることに気づいてしまったからである。
 「おはよう・・ご・・ざいます・・・」
 「おお!起きたかぁ!」
 すでに3人は宴会が始まっており、途中から飲みだすもそうもエンジンが掛からない。何時かと思い八ちゃんに尋ねる と何と夜中の1時半!しばし、焚き火を眺めまどろみながらもチビチビ焼酎を呑んではウトウト。ハッと起きてはチビチ  ビと・・・
 「何だか腹減ったなぁ・・」誰かがイグニッションキーをまわしたようだ。1回掛かるとこのエンジンは高回転だった。
 「ラーメン食いますか?」「えっ?あんのかい?」「もちろんじゃないっすか!」
 この会話の順は、 八ちゃん→齊藤さん→八ちゃん です。想像通りでしょ。
 昼間採ったシドケとウドを油炒めにし、トンコツラーメンにトッピング。冷え込みも手伝って汁まで飲んでこれまた満足。




  朝も白々と明け始めこのまま釣りに行きたいところではあるがなんせ眠い。あれだけ騒げばみんなも眠いようである 。 誰が云うでもなく惰眠をむさぼり釣欲は森の彼方へと豪快はイビキが吹き飛ばしたようだ。
  ふと目が覚めるとカッと照りつける日差しに首筋の汗をぬぐう。ヨロヨロと起きだし沢に冷やしてあった残りのビールを 開けみんなが起きだすのをゆっくりと待つこととした。

  山での朝はやはり炊きたての白い飯と味噌汁、ベーコンエッグと山菜の油炒め。それに加え誰が何と云おうとシャウ エッセンは外せない。シャウエッセンには細かく斜めにお切り目を入れて多目の油で表面がカリカリになるまで炒める 。そのとき大切なのは塩だけで炒めることである。胡椒をかけたい気持ちを抑え、あえて塩だけで炒めることが呑みす ぎて食欲の無い朝にもモリモリと食がススムこと請け合い。(皆様も是非お試しあれ!!)

これがたまんまいっす!!


  まったりとした朝を過ごしテンバの撤収を始める。もう一泊したい気持ちはあるが何事も腹八分目。
 燃えカスも焚き火の跡もキレイ片付けチョットだけ軽くなったザックを背負いのんびりと沢を下る。
 途中お土産にとアブラコゴミを採り、流れ落ちる沢の水で喉を潤す。
  沢を右へ左へと進む足も心なしかゆったりとしている。昨日のヘツリも今日は楽チン。暑いけど風が心地よい。
 折角だからザックを降ろし汗を流そう。冷たくても構わない。とことん、遊んでそして帰ろう。


飛んでます。

  山の空気を全身で浴び初夏の太陽を仰ぎ見る。ソフトクリームを思わせる白い雲。

 そんな時一匹のセミが木々の間を縫うように飛び去ったような気がした。

 今年も暑い夏の足音がすぐそこまで来ているようだ。

 





(ほんぐう かずひこ)
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