Fishing2009釣行記 恐るべき大川、恐怖のゴルジュ突破と懸垂、そしてカサボリックシンドローム
恐るべき大川、恐怖のゴルジュ突破と懸垂、
そしてカサボリックシンドローム
〔新潟県笠堀大川〕
 
  
[報告者] 齋藤 敦
釣行日:2009/7/24〜26
 メンバー:上田 勉、平江 誠
 大塚八朗、齋藤 敦
 
 
 
 
 今回の参加者の上田さん、平江君とは関越周りで現地集合、私とはっちゃんは深夜割引適用のぎりぎりの時間を狙って磐越道猪苗代高原IC 出口で合流、私の車に相乗りで目的地を目指す。月末も近いというのに梅雨も空け明けもまだでどんよりとしたはっきりしない天気の中をひた走る。下車した安田IC からはナビの迷案内のせいか以外に時間がかかり、目標時間を1 時間弱オーバー。集合場所に到着すると既に相当出来上がった表情の2人が。久し振りの再開と2 日間の出来事が安全で楽しくあることを願い乾杯。これ以上は、と言うところで仮眠し、パッキングができあがる頃は既に9 時、何ともネボスケな釣り人だ。

ダムサイトから見る上流には延々と湖岸道が延びていて目指す大川、光来出の2叉の支尾根らしき所は遥か先。
肩に食い込んだザックを背負ってあそこまで、と思うとのっけから気が重くなる。湖岸道は以外に整備されアッ
プダウンも少なく歩き易い。名物の山ヒルも覚悟していたが、数匹がシューズに張り付いていただけで実質は被
害なし。通常なら2時間半と言われている2叉までの行程も沢をまたぐ度の休憩で中々はかどらない。

途中の沢で休憩 沢水は総じて温いが
ここの水だけは冷たくて美味かった

 2時間も歩いた頃か今までの樹林帯歩きが終わり、草付きのスラブに付いた心細い道に変わる。「ウルイサドリ」と言われるところだそうだ。この辺りからは2叉の支尾根にある観測所のアンテナのような物が見て取れるがまだ相当距離がありそう。スラブ帯を抜けるとまた樹林帯になり、やっと2叉を見下ろす場所に到着。一息ついて「やっと」と思った矢先、「この下へは降りられないので光来出に沿って階段のある場所まで行かなければならない」と言う。
 
 一旦終わりと思ったせいもあってこの道が以外に長い。気を取り直し暫く行くと苔が生して所々欠けているが山奥には場違いなコンクリートの階段があり光来出の川原に降り立つ。初めて来たがあまり水量が多いようには感じられない。ここで少し遅い昼食で大休止。今年はアブの出も早いと聞いていたので覚悟して備えをしてきたが、金色のアブが1匹寄ってきただけで嬉しい誤算。対岸には更に階段がありここを上がっていくと大川の最初の悪場、音滝を巻いて滝頭に降り立つことができる。何度目かの上田、平江氏によれば平水よりも水が太く、降り立った直ぐの場所を渡渉するにも激流の流芯を外して飛び込まなければ進めない。もしここで失敗すると直下の音滝に飲み込まれることになり、冗談では済まない。

 泳ぎでは会ピカイチの平江氏に先頭で突破してもらい、後続も何とか渡り終える。ほんの僅かの川原歩きの後、深く長いゴルジュになり以前来た時はここを泳いで抜けたそうだ。今回も同様に平江氏が試みるが途中まで取り付いたその先の流れがきつく数度試した後断念。 

 今までのゴルジュの突破に相当な手間が掛かり既に3時過ぎ。もうテン場を決めないとやばそうな時間。予定した小俣川との2叉まではまだまだ相当な距離があり無理、かと言ってここまでに寝られるような場所も全くない。天気もどうなるかわからないような雰囲気で安易に水線近くにテン場を取ることは命取り。とにかく前に進むしかなく思案の結果、左岸を大きく高巻くルートに入る、高い位置だが川とほぼ平行に付いた殆ど踏んでいない不明瞭な道らしき所を行くと少し大きな沢を跨ぐ。沢を下降すればゴルジュの上に降りることができるが、残念ながら垂直の滝で落ちていて無理。更に本流沿いに進み段丘になった場所から何とか本流に降り立つ。空身で偵察に行くがここから上部50mはまた大きな淵で泳がされるのは確実。その先はクランクになっていて状況も読めない。付近で本流に水が落ちている場所をあたっても快適は無理にしても寝れそうな場所さえ見つからない。

 結局降りた場所を登り返し高巻きの途中にあったやぶ椿の中の割合平らな場所に落ち着く。後でわかったことだがこの巻きのルートには何ヶ所かの古い泊まり場の痕跡があり、他のパーティーも同様の状況であったことが推察される。結果としてはこの先には2叉までテン場らしきところはなく、最良の選択だったと気が付く。水場は少し不便で登る岩壁から湧き出る水は冷たくて美味いがテン場の所では伏流水になっていて汲み置きして置かないと使えない。ともあれ日が落ちるまでにはと急いで整地をしてタープを貼って着替えれば後はどこでも一緒。少々湿っぽいこともあってヤブ蚊には悩まされるがいつもの楽しい宴会タイムの始まり。今宵の宴には岩魚はいないが持ち寄った食材で十分、いやこれが山での食い物か?と言うような料理が次々に出てきて大いに酒も進む。

 僅かの仮眠と殆ど歩きっ放しだったこともあり睡魔が襲う。樹林の中のテン場は風もなく暑苦しい。シュラフカバーに入るのも苦痛で上半身裸のまま眠りこけると今度は蚊の猛攻で寝ていられない。やむなく暑いのを我慢してシュラフカバーを頭まですっぽり被り、たまに暖かくなったカバーの内気を換気して目をつぶる。

 夜半に強い雨音で叩き起こされ、相当増水しそうな雨足で明日のことが心配になる。うとうとしている内に白み始め直ぐそばで鳴いているヒグラシに起こされる。直下の渓をヤブ越に除くと意外に水は澄んでいる。今日は二又まで行けるだろうか。

 コーヒーそして朝酒でまどろみ、昼用に酢飯をこさえて出発。まずは鷲ヶ沢出会いまではと言うことで幾分増水気味の本流を遡行。1時間弱で沢の直下の滝を巻くスラブに到着。このスラブは手掛りに乏しく、高度もあり落ちたらまず助からない。また運よく助かっても過去にも飛び込んで白泡にもまれて落命した人がいる淵とのことで上がってはこれないだろう。
 へっぴり腰になりながら何とか渡り終えると約10mの高さの切り立った岩場を本流に下りることになる。ここは頼りなさそうな残置のハーケンと中段位までは届きそうなテープがあってここへ持ってきたお助け紐を掛けて降りる。降りた場所は丁度、鷲ヶ沢の出合いでここは大物の実績があるとのことで今釣行初めての竿を出す。

 本流の淵に湖岸道で取ったバッタを振り込むと一発であたり。大物の感触、が、残念合わせ切れ。気を取り直して上田さんと鷲ヶ沢の遡上止めの淵を釣りに。私は気配十分な奥座。上田さんは目前の淵尻。どう見ても私の方が一級ポイントなのに私には8寸、上田さんには尺上。欲張りは損を見るということか。

 ここで一旦竿をたたみ次の難所の攻略に思案する。まずはずるずるの一枚岩をスパイダーマンのように這い上がり、ここからザイルで狭まってガンガンの流れのへりに降りる、降りたら流芯に入らないようにヘリを泳いで上のガンガンの瀬の少し勢いの弱い所へへばりつく。更に対岸に強引に渡り、水流に逆らいながら側壁の僅かな凹凸に爪を掛け摺り足で突破する。表情は全員真剣。一歩間違えて流されたら落命の滝までウォータースライダーのように持って行かれる。何とかチームワークで突破し開けた場所に出る。ここからは特に悪い場所もないそうでそれぞれが竿を出しながら2叉を目指す。瀬でエサを待つ岩魚も見られるようになるが、意外に毛鉤、エサ共食い付きが良くない。途中まで追いかけて戻ってしまう岩魚もいて思ったほど釣れない。それでも寿司には十分な数をキープし開けた川原で昼食とする。平江氏が目前の流れ込みで大きそうなものを掛けたが、残念、顔を見る前に仕掛けが切れてしまう。

夏のきのこ「たまごたけ」ザックにくくり
付けた袋に入れておいたがゴルジュでもみ
くちゃになって結局、腹には入らずじまい


ウルイサドリを帰路、下から望む



 天気も青空に回復しソーメンが最高、岩魚寿司もたらふく食べて。とにかく二叉まで行って見ようとのことで先を急ぎ、1時間弱で到着。出合いの砂地にあるテン場は決して安全とは言い難く、この川は天気を選ばないと痛い目に会いそうだ。水量は支流の小叉川の方が若干多いようにも見える。時間も時間で二叉を見たことで本日の行動もこれまで、と言うことなのだが実は私は鷲ヶ沢での釣りの後直ぐに竿のトラブルでエサ竿が使用不能になり、その後予備竿でテンカラをやっていたが1匹も釣れていない。皆さんに少し時間をいただいて本流の緩やかな遠めにも美味しそうな場所を釣らせていただく。 

 流れにそっと近づくと2匹の岩魚がエサを待っており、1m上流に毛鉤をポトリと落とすとすぐさま咥えて反転したのが見て取れ、即合わせ、フィッシュオン、晴れてテンカラボウズ解消。もう思い残すことは何もない。この二叉で記念撮影をして後はテン場まで。流れは来た時よりも減水して歩き易く瞬く間に鷲ヶ沢の難所に。 
 
 来た時に残したテープで登り返すが平江氏が消耗しきった靴底のお陰で岩場の途中でセミ状態になる。一足先に上っていた私がテープを投げ渡し無事突破。後は意外にあっけなくテン場に到着。

昼の寿司用に魚をさばく
寿司とソウメンや他の写真も沢山あった
がはっちゃんのカメラがの帰りに音滝に
飲み込まれ救出不能に


 今日の夕飯は鷲ヶ沢で釣った2 匹の岩魚をフライパンで揚げながら身をほぐし、ひつまぶしに。飯も美味く炊け酒も料理もまだふんだんにあるのに飯がすすむ。料理のメニューはモツ炒め、手羽焼き、ナス炒め、ジンギスカンなどなど「あんたたち山で何食ってんの?」と言うような超贅沢。深夜になりさすがに満腹、泥酔間近、もう一歩で酩酊、意識混濁という所でダウン。夕べのように雨音に叩き起こされることもなく朝まで爆睡。尿意とのどの渇きで目が覚めると昨日と違う心地良い風が吹く爽やかな朝。今日は9 時撤収と言うことで残り少なくなった酒を一滴残らず納め随分と軽くなったザックを背負い流れを下る。

フライパンからはみ出してしまう岩魚は
ひつまぶしでいただきました。超美味!!


モツ炒め

手羽炒め

 尿意とのどの渇きで目が覚めると昨日と違う心地良い風が吹く爽やかな朝。今日は9 時撤収と言うことで残り少なくなった酒を一滴残らず納め随分と軽くなったザックを背負い流れを下る。

 水量は来た時から比べ随分と減水し遡行も何の問題もなく距離を稼ぐ。深い淵はすべて泳ぎでの突破であっとい
う間に音滝の滝頭へ。来た時とは違う滝の直下に下りる階段を行けばダムのバックウォーターは直ぐそこ。途中
の川原で食べ切れなかった食材を具にラーメンを食べる。「ん〜ん、んまい」。

音滝にて記念撮影 大したスケールには
見えないが大川の全水量が轟音を轟かせ
落ちている 落ちたらよほど運が良く
ない限り出られない
バックウォーターですっかり
晴れ上がった空の下、ラーメン

湖岸道から管理事務所を望む
直線ではそう遠くないが沢を跨ぐたび
に道が迂回するので結構歩かされる



 適当な所から湖岸道に上がると遥かウルイサドリを通り越し、特に難所もなくだらだらの道歩きでダムサイトに到着。水量の多さで一時はどうなることかと心配をしたが何とか結果オーライ、いつものように一同十分楽しめました。帰りは高速1,000 円の恩恵を受けて燕三条IC から乗車、途中西会津付近で視界の殆ど聞かない横殴りの豪雨と雷に遭遇、こんな雨に大川のゴルジュの真っ只中で降られたらと思うとぞっとする。

 水量が多い場合は延々と続く下流部のゴルジュの突破は極めて困難です。また激流に飛び込む場所や際どい岩壁の下降など失敗すれば怪我では済まない所も多々あります
テン場も上の二又まで渓沿いには安全な場所はありません。今回は高巻きを余儀なくされ、たまたまそのルート
にあった場所が結果的に最良の選択でした。近辺に過去にもテン場とした痕跡がありますが、渓の中にいては気
が付きもしない場所です。
天候はもちろん、メンバー構成も重要になります。安易な入渓は控えるべきだと強く思わされました。
 


(さいとう あつし)
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