Fishing2011釣行記 塩原 鎌研沢の赤滝を目指して[栃木県箒川支流]
塩原 鎌研沢の赤滝を目指して[栃木県箒川支流]
 
  
[報告者] 高瀬賢一
釣行日:2011/5/14〜15
 メンバー:小鷹哲、小池卓
 高瀬賢一
 
 
 
 
 5月も半ばとなれば、塩原の山の中でもそろそろ雪も消え、木々の枝の先っぽも芽吹きが始まる。
四季を通じて繋がっている命も、この芽吹きの季節が一番感動の時だ。
そしていよいよ始まったなと、期待ばかりが膨らむ季節となる。

 今年もこの感動が味わいたくて、待ち合わせ場所の道の駅へと車を走らせているが、最近の温暖化の影響か、もう外は夏の様な強い日差しだ。

 約束の時間よりだいぶ前に到着した道の駅は、半そで姿の観光客や初夏の日差しに誘われた人たちで賑わっている。駐車場に車を止め賑わう人ごみの中を待ち人を探して歩く。まだちょっと早いかなと思いつつ、中央のちょっと南側のベンチに腰掛け、たばこと缶コーヒーの男を発見、近づいて声をかける。
口髭を生やした口元が人懐っこく笑う。

「早いね、待った?」
と声を掛けると
「混むかと思って余裕をもって出たら、だいぶ早く着いちゃったよ」
と小鷹会長。
「この時期仕事が暇なんだよ」と本格的がシーズンを心待ちにしている様子。
昨年もこの時期奥様と愛犬の二人一頭で、九州一周のドライブ旅行を楽しんできたとの事。
小鷹氏の愛車、白のデリカは車中泊も容易で長期のドライブ旅行には最適であり大活躍だったらしい。
会話の端々から楽しかった事が伝わってくる。年を重ねる毎に夫婦とはこうありたいものだと感心させられた。
今回のもう一人のメンバー、小池事務局長も
「どうもどうも、早いね」
と声を掛けながら現れる。今年最初の野営に皆さんも楽しみなのか予定より早い集合となる。

 早速道の駅名物、蕨の入った山菜オコワを昼飯用に購入し、入渓地点へと出発する。
途中いつも通る道ではあるが、人家もなく畑もここが最後だという場所に来ると、以前小熊に遭遇したことを思い出す。
道路の両側が畑になっていて、その右側の畑にいた小熊が何かに驚いたのか、車の前10bぐらいの所を猛スピードで横切っていった。
多分体重20`ぐらいの小熊だが、あんなに早く走れるものかと驚かされたことがある。人家もそれほど離れていないし、この先には温泉もある。まだまだ人の近くに野生が残っているものだと嬉しい気分にさせられた。

 やがて車止め、入渓地点に到着。簡単な荷づくりを済ませしっかりとした林道を快調なペースで進む。最初の堰堤を過ぎたあたりから左眼下に見事な『いかにも』の景観が広がる。なんとも素晴らしい渓相で溜息が出る。いかにも大物の予感漂う渓なのだが何処も同じ『昔は』が付く。

 しっかりした林道も途中から山菜道に変わりそれらしい遡行となる。
やがて谷も開けて右側より小沢が入る場所に至る。小池氏曰く
「水場は近くにあるし何といっても地面は平らでフカフカ、最高のテンバだよ」
と、昨年入渓したおりキャンプするならこの辺でとメボシを付けていたらしい。

   フカフカの快適なテンバ

 
   
苔むした岩と清冽な流れ


 流石に達人ともなれば目の付けどころが違う。
周りを見渡せば、ほんの少し新緑の始まったクヌギはミズナラ、そして落ち葉で埋まった斜面、日差しを遮る物もなくポカポカと暖かい水辺のテンバ。
「こりゃ、毎年来るようだなぁ」
妙に納得し準備にかかる。

 薪も集め設営完了、早速晩のご馳走を確保に釣りに出かける。
このメンバーでボウズは無いだろうとは思うが寂しい宴会にならないようにと真剣に毛ばりを振る。

 


一日目の釣果



 もうひとつの楽しみでもある山菜もそこそこ確保でき、おひたし、天ぷら、翌朝の山葵(ワサビ)漬けとなる。
釣果の方はと云うと、小池氏の釣った8寸のヤマメが竿頭で天ぷら用、時間をかけて焼き上げる塩焼き用と必要な数の岩魚は確保できた。
焚火のすぐ脇の立ち枯れた木を地面から1bくらいのところをノコギリで切り取り、そこをランタン置き場とし明かりを確保。太目の倒木を移動して椅子とし焚火の周りを宴席とする。


焚火で暖を取る私

岩魚の塩焼き



 そうなると気になるビールの冷え具合、ついついビールを飲みながらの料理となる。
料理が出来る頃にはもうだいぶ良い気分で、天ぷら名人小池氏の作るホクホク揚げたて岩魚の天ぷら、麺つゆをたっぷりつけて頂く。
「アツアツでこれが旨いんだよ」と私、もう最高!
ちなみに小池氏はテンカラ名人と天ぷら名人の二冠タイトル保持者である。

 今回の目的は久々の野営、焚火と宴会、山菜、そして本当に久しぶりの鎌研沢の赤滝を訪れる事であり、明日もまだ充分楽しみが残されている。
もうだいぶ寒さも和らいだとはいえ焚火のある夜は嬉しい。取りとめも無い会話に笑い声が混じりいい塩梅にアルコールが廻る。そうなるともう次の計画の話となる。さすがにキャリアのある二人引き出しは多い(年齢をもう少し考慮に入れてね、就寝)


 翌朝目が覚めると穏やかな快晴、残り火に薪をくべ、飯を炊き岩魚汁を作る。
昨夜漬けこんだ山葵を試食してみる。熱湯をかけ、刻んで麺つゆに漬けておいたのだがこれがなかなかの出来、普段あまり食べない小鷹氏だが好評。持ち帰っても仕方ないのでアルコールの処分(つまみ)となる。
ツーンと鼻腔に抜ける爽やかな辛さ、シャキシャキした歯応え、良い具合に麺つゆに漬かり、さすがに山菜の女王、たまりません。山葵漬けに感動、感謝。
小池氏も掌に乗せて試食、「良いんじゃない」と絶賛(季節限定です)。
美味しく朝ごはんを頂き、小鷹氏持参のコーヒーをすすって本日の目的、釣り、赤滝、土産の山葵へと出発。

 日差しも暖かいし何やら楽しい一日になりそうな予感がする。
小池氏、小生カメラマン、小鷹氏エサ釣りで交互に釣り上がり放流を繰り返す。最後の堰堤でヤマメ、岩魚の混生を確認、竿をたたんで堰堤を左に高巻く。堰堤を越えると沢は二又に分かれ左が鎌研沢となり目的の赤滝は近い。
周囲に目をやると暖かさに誘われて羽虫が飛び芽吹きも昨日と違い、さらにひと色濃さを増す。
そして昔を残した見事な渓相を楽しみながらの釣りとなる。やがて視線の先に懐かしい姿の赤滝を捉え静かに近づく。

 堰堤が出来る前はこの赤滝が魚止めになっていた為『昔』は大型も期待できたがそれも今は昔である。
早速滝壺に小鷹氏が挑戦。身を低くして餌を沈めてゆくが、魚信は無くあえなく敗退となる。やはり『昔』であったか。


赤滝の滝壺を狙う小鷹氏

   念願の赤滝と私

 
     
さあ、シャワークライムの始まりです



 鉄分が多いのか、茶褐色に見える岩と、その上を流れる白く泡立つ水とで作る景観は初夏の日差しを集めて妙に感動的だ。赤滝の由来はこの赤に近い茶褐色の岩から来ているのか、しばし景観を楽しみつつ滝上を目指すこととする。
階段状になった滝は簡単に登り降りが出来、頭上に降り注ぐ水しぶきを楽しみながらの前進となる。日差しのせいなのか、はたまたアルコールの影響なのか赤くほてった顔にはむしろ心地いいシャワーだ。
滝上の小さなプールを胸まで浸かり、左岸の岩をつかみながら越える。さらに小鷹氏を先頭に釣り上がるも魚信は無く納竿とする。深い谷ではないが久しぶりに赤滝を訪ねその上流を歩けた事に満足する。
さあ、最後のお楽しみは天然山葵のお土産確保だ。
惜しみつつ来た道を戻るが、途中堰堤を巻かずに消えかかった林道を戻り、危なそうな斜面を下りる。やがて左手に小さな滝が見え、その斜面に透けるような緑の葉とぁk連可憐な白い花、お目当ての天然山葵の群生が見える。
それぞれの株から葉と花を少しずつ摘み取り、自然の恵みを分けて頂く(ちょっと危険な場所です。)


山葵の群生

可憐な白い花



 別な場所にも群生はあったのだが心無い釣り師に根こそぎ抜かれて持ち帰られてしまい今ではここだけになってしまった。(自然を大切にね)

とにもかくにも、今年最初の釣行は、同行両氏のお陰で大満足の二日間となり、来年を約束して終了となる。




 


(たかせ けんいち)
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