本年度新入会して齋藤さんのプライベート山菜釣行と水トレにしか参加できずにいた私は、毎日毎日会の釣行記録を読みふけってはまるで他人事のように笑い、驚愕し、時には感銘を受ける毎日を過ごしていた。
会の釣行記録を読むと雨の中の濁流の中帰還や、山越えでの入渓、ルートミスによる懸垂下降といった遭難さながらな記録が並ぶ中、自分に付いて行けるか正直不安でたまらなかった。
シーズンも終わりに差し掛かり、せっかく会に入会したのにこのままではいけないと自分を奮い立たせ、シーズン最後の会の釣行に参加するべく、リーダーの齋藤さんへ連絡を取り、
2泊での計画だということを知り仕事が休めるか確認するため少し時間をいただき、休めるという確認をとれたことで晴れて参加表明することとなったが、社会人としてははっきり言ってクズのような『それっ!!』と後輩に仕事を押し
付け晴れて再度参加表明できた次第である。もうこうなれば何が何でも楽しむしかなく仕事のことなど微塵も考えることはなくなったが、ただ一つ気がかりなのはいつもなら一日二日程度で治るはずの痔が三日も引きずっていることくらいか。デリケートになったお尻と共に文明から離れた山奥へ行くのは一抹の不安はあったが、持ち前の楽観的な性格とプラス思考でいつしかこれもどこかへ消え失せていた。こうして私は廃人となるための、私にとっては大きな
第一歩を踏み出したのである。
結局仕事を任せて来た甲斐あって、集合場所へ到着したのはAM0:30頃。
2台の車が止まっていたが中は暗く就寝中であったため軽く明日の準備をして自分も早々に休むこととした。
AM5:00早朝車を出ると一同思わず寒いと口走る。すっかりガラスのように硬くなった冷気が身を引き締め、季節は
いつのまにか秋が始まっていた。
各々朝食を食べながら荷造りや身支度を整える。齋藤さん以外の方とは私は初対面で、軽くご挨拶をした。
AM7:00頃、靴紐をしっかり結び、さぁ出発だ!!
歩きだし僅かの急登手前の水場でピンソール装着の儀と水分補給をする。
私はピンソールの準備を怠りまた不安要素が出てきたが、持ち前の能天気と忘れやすさでカバーする。
道中は舞茸を探しながら、諸先輩方からあの木この木と指差し指示を受けてはリモコン君となり多事多端、東奔西走ひたすら舞茸の確認をするが、一向に見つからない。
自身、天然舞茸が自生している様を見たことがないため、今回はそれを自分の眼で見ることも目標にしており、俄然やる気はあるのだがなんせ相手は自然である。そう甘くはない。
そうこうしているうちに急登へ突入した。
小鷹さん、齋藤さん、林出さん、寺尾さんはゆっくり舞茸を探しながら行くので、私は平江さんと先に行ってテンバを
作っていてほしいという最重要機密任務を仰せつかり、それはなんと名誉なことかとまた張り切って平江さんの後を追うこととなったが、いやいや化け物である。20ほど年が上にもかかわらず全く追いつけないのである。
ついには全く見えなくなり、知らぬ山奥のただの踏み後を一人黙々と歩くこととなり精神が崩壊しかけたころ、私の中の悪魔が
『平江さんのリュックは空だ。』
『あのリュックの中はヘリウムで、平江さんは浮いている。』
『平江さんは人じゃない。』
などとささやいてくる。
色々な可能性を検討しもう少しで結論が出るに至るころやっとピーク手前になり、平江さんが休憩しながら待っていてくれた。ここからすぐ下降になるという。
下降は下降でフェルトソールの私の足元はずるずるで何度も転びほうけ、危うく谷底へ消えるところであった。
痩せ尾根なんかでも軽やかにステップを踏みながら下降する平江さんに、後ろからスライディングを何度かかまして
しまい、途中非常に分かりにくい分岐点も僕がきっと間違えるだろうと予知しており待っていただいていたのは本当にびっくりした。
お気遣いありがとうございます。