楽しき源流釣行 | ||||
本宮 和彦
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週末、一週間の仕事を片付け職場に別れを告げ一路仲間の待つ山間の車止めへ。 藍色の空は満点の星に覆われている。そぞろ集う仲間の顔に翌日からの厳しい遡行も忘れ、前夜祭は大盛り上がり、おかげで翌朝清々しい空気の中、頭痛に悩まされながら重いザックを背負い歩き始めるのである。 概ね山行には二種類あり、ひとつは沢沿いを水につかりながら進み淵や滝を越えて行く、残りのもうひとつは山を越えて沢へ降り立ち下流部の遡行をパスするショートカットコース。どちらも一長一短であり前者は沢登り、後者は登山の要素を濃くするがどちらも危険が伴う事には変わらない。 私は近年沢の遡行に楽しみを憶え泳ぎを交えた沢へ向かいたいと思っている。それは厳しい環境下に棲むイワナへの尊敬の念に近い感情の表れである。恒温動物が低温水中で過すには制限がある為、冷えた体を日向で暖めながらまた淵を泳ぐ。泳ぎが不得手なメンバーにはテープを引いて難所を助けその協力がメンバーの信頼関係の構築に一役買っている事は明白だ。 【山越えから渓を見渡す】 【泳ぎを交え上流を目指します】 1日掛けて着いたテンバではそれぞれ楽しみにしていた時間を過ごす。上流部へ釣りに出掛ける、薪を集め焚火の準備をする、早くも持ち上げたビールに手を出すことも。誰にも制約を受けることなく沢での時間は辿りついた者だけに自由を与えてくれる。当然食事には料理が付き物であり料理には食材が付き物である。 春には山菜、夏はイワナ、秋にはキノコが宴に彩を与えてくれる。ここで副食に持ち込んだ食材を調理し酒と合い見舞った夜の宴は街の居酒屋では決して味わえない至極の酒場である。 【滝を越えて上流部を目指す】 【源流部の穏やかな流れにフライが舞います】 【それでは乾杯!!】 【素晴らしい源流釣行】 ある源流釣行の際とても親しくして頂いた先輩から云われたひとことが私に少しの自信を与えてくれた。 「本宮君、随分と脚が源流向きになって来たな!」 云われた時には何の事か分からなかった私であった。今は亡き田宮支障の一言が理解できるようになってきた私は今でもその言葉を片時も忘れずに胸に仕舞い込んでいる。 来るべきシーズン、私は野を越え山越え谷越えて素晴らしい源流釣行を大いに楽しむためこの冬も脚作りに励んでいこうと思う。
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