俺のテンカラ釣り | ||||
小 池 卓 |
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〜はじめに 日本古来の渓流毛鈎釣りテンカラ、語源についても定かでなく、一人一派と言われているテンカラ釣り、俺の釣り方について述べてみたいと思う。 俺がテンカラ釣りを始めたのは二十歳頃からで、かれこれ 30 年になる。始めたきっかけは、以前勤めていた会社の先輩にテンカラ釣りの名人が居て、その方がよく日光の鳴沢、大谷川で尺上のイワナを釣り、会社の上司に土産として持ってきた。俺もその頃、主に日光の湯川で虹鱒、パーレット鱒(ブルックトラウトを日光ではこう呼ぶ)の餌釣りに熱くなっている頃であり、その先輩とよく釣りの話をした。 名人の釣りは、4 bのグラスファイバーの竿に 3 号一ヒロのラインを付け、金コマ、銀コマと呼ばれる日光毛鈎を使って釣っていた。但し、同行はしていないので釣り方は分からない。 その頃登山にも興味があり、よく尾瀬に出掛けていた。尾瀬ヶ原を散策すると上の大堀、下の大堀など木道が支流を渡るたびに多くのイワナのライズが見られた。釣りキチの俺にとっては、釣りたくて居たたまれなくなったものだ。その当時の尾瀬には職業釣り師も居て、釣りについてはさほど煩くも無く、常宿としていた龍宮小屋の玄関の脇に延べ竿が立て掛けられてあり、60 cmを超えるような大岩魚の魚拓が自慢げに飾ってあった。 通いだして最初は戸倉から山の鼻峠までバスで入ったが、バスの帰り時間が早いので原付の免許を取り、50 cc のバイクで開通して間もない金精峠をエンジンを冷ましながら通ったものである。最初の頃は、支流の小さい場所で名人に教えてもらった仕掛けに釣具屋で買った毛鈎で提灯釣りをしていた。 尾瀬のイワナは水面に浮いて流れてくる昆虫類を捕食しており、気付かれないように目の前に毛鈎を流せば釣れるものだが、最初は合わせのタイミングが判らず、逆に魚が見えるので気ばかり焦って数は釣れなかった。何回か通ううちに、宿の親爺にヨッピ川の魚は大きく数が出るとの情報を貰い、下の大堀出合より入渓した。ヨッピ川は川幅が10b程あり、尾瀬ヶ原を蛇行してゆっくり流れ、倒木が沈んでいる所やカーブしている場所では、イワナが群遊しており桃源郷であった。そんな大場所で一ヒロの提灯仕掛けに買った毛鈎では、釣果も今一つであった。何回か通ううちに、ある職漁師と出会い、少しの間であるが釣りを見せてもらった。その職漁師は、竹の延べ竿に馬素のラインを使い、茶系のマダラ巻きの毛鈎(胴まで蓑毛を巻いた)で面白い様にイワナを掛けていた。別れ際に彼自作の毛鈎を 1本頂き、大事に持ち帰り真似をして巻いた。 また、ラインも試行錯誤で長くし、それ以降の尾瀬通いでは 1 回の釣行で 30 匹以上の釣果をみせた。しかし昭和 50 年頃になると自然保護が叫ばれ、尾瀬での釣りはやめた。今となっては尾瀬のイワナ釣りは楽しい思い出である。 大分前置きが長くなってしまったが、俺にはテンカラ釣りの師匠はいない。俺がやっているテンカラ釣りが完成とは思えないが、これからテンカラを始める会員の参考になればと思い書いてみた。 1.仕掛概念図 まず、テンカラ釣りは毛鈎が自分の考えているところに入らなくては釣りにならない! そこでラインであるが、俺は段落しのレベルラインを使っている。通常の川であれば 7 bのラインを使用し、段落としは以下の割合で細くする。 全長=5(7号):3(5号):2(3号) 継ぎ目は、フィッシャーマン結びを瞬間接着剤で補強、糸はフロロカーボンが比重が重く良く飛ぶ。 7 bのラインであれば、 7 m = 3.5 m(7号): 2.1m(5号): 1.4m(3号)となる。それに 1 〜 1.5 号ハリスを 1.5 m 付ける。 3.竿(ロッド) 竿は、4 〜 4.5 m を使用する。よくテンカラの解説書には 3.3 〜 3.6 m と書いてあるが、長いラインを使用する場合は支点が高くなり、ラインの戻りを防げるので長い竿が有利である。但し、欠点は竿が重くなることであるが、 重量は 80 g 以下(強度があり軽ければ軽い程ベター)を基準に考えたい。 4.流し方 次に毛鈎の流し方であるが、俺の場合はラインを張らずに"流れなり"の状態(ナチュラルドリフト)に心掛けている。この事により魚が毛鈎に反応して、 銜えても吐き出すまでの時間が長くなり、瀬畑先生の持論である"遅合わせ"でも十分に鈎掛かりする。時には毛鈎を見失っても、向こう合わせで鈎掛かりする時もある。 5.合わせ 以前の参考書は、魚が見えたら"瞬間に合わせろ"と書かれており、俺もまともに信じて魚が鈎掛かりしないと、合わせが遅かったと勘違いし、更に合わせを早くした。そんな理由でテンカラは難しいとされているのではないか! 6.毛 鈎 毛鈎は最近市販の物でも良いものがあり充分使えるが、テンカラ釣りの面白さは自分で巻いた毛鈎で魚を掛けて倍増するのでは。 道具・材料などはフライフィッシング用の物が使えるので是非巻いてほしい。 毛鈎の選択は、朝夕は目立つようにクリーム系。日中は地味なダン・黒・茶系。盛夏の源流域ではテレストリアル(昆虫に似せた毛鈎)を基準に使っている。毛鈎は関係ないという考えもあるが、魚が毛鈎を選んで捕食していると考えた方がより楽しい釣りになるのではないか? 〜最後に 竿にラインに毛鈎、これ以上省略しようが無い単純な道具のテンカラ釣り。餌釣りを否定するつもりは無いが、餌釣りでは攻めにくいチャラ瀬、渇水期でも条件さえ合えば釣れてしまうテンカラ釣り。 魚のリリースでも魚のダメージの少ないテンカラ釣りを始めてみては如何かな! テンカラ釣りを始めたい人は、ご一報をお待ちしています。 1997/4/1発行 『宇都宮渓遊会 会報』より |
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