1.岩魚はドジョウやウナギのように皮膚がヌルヌルしている、そして大きな魚体ほどそれが少ないように感じられるがその理由とは?
岩魚は主に次の2つの目的のために皮膚にぬめりを持つと考える
1. 大水が出た時の土石流を身体でまともに受けないでかわすため大水の直後に擦過傷を帯びた岩魚が釣れることがあるが、もし皮膚にぬめりがなければより大きな傷を負うのではないか
2. 岩魚は表面に見える水中とその下層のゴーロの隙間を頻繁に行き来しているのではないか?狭い隙間を潜り抜ける上でぬめりは有効且つ不可欠
大型岩魚にぬめりが少ない理由
1.壮年期を過ぎて種の保存要員としての必要性が薄れる → 死へのカウントダウン体格維持に餌を多く必要としながらも種の保存の役目が薄れた大きな魚には主役交代をしてもらわないと次の現役世代が役目を果たせない
2.魚体が大きい分、より多くのぬめりの分泌を必要とするが、加齢で必要量を維持することができなくなる
3.魚体が大きいと一辺の鱗のサイズも大きく摩擦が大きくなり、ぬめり感がなくなる
4.体表面積が大きくなることで流水や土砂で洗われ易くなる
5.エゴ〜地下水(川の下の川とかの阿部武は表現した)を行き来する際により大きな隙間が必要で中型岩魚なら労せずに潜り抜けられても大型岩魚にはきつくなってぬめりが削げ落される
2.岩魚の生活場所
悪食と言われる岩魚、事実そうであれば強い岩魚(=大きい岩魚と言う意味ではない)は餌取りの最上位のポイントに定位し、今か今かと餌が流れてくるのを待つことになるのではないか。
しかし、このことは岩魚にとって生死にかかわる、かなり大きなリスクでもある岩魚がこのような特性であるならば猛禽類は上空や大石の上から常に注視し、隙あればと狙うだろうし、真っ先に欲深い釣り人の餌食なるであろう
「強い岩魚」(餌捕りに長け、ペアリングの闘いに勝って子孫を多く残す、より多くの抱卵をする)はリスクを承知でその環境を生き抜いていると言うよりは危険回避など生活術に長けているからではないか。
生活術とは餌取りの旨い下手は当然としてもどこで生活をしていたなら最小限のリスクで「強い岩魚」でいられるか、ではないか。
恐らく本来の岩魚の生活の主体は地下水の中にあり次の時に限り、リスクを犯して見える水中に出てくるのではないか。餌を捕る、生殖行為をする、他に縄張りを知らしめる、大水で地下水の出入口が塞がれる前に脱出する必要がある。よって地下水から出入りする、危険を察知した時に素早くそこに戻るためには前出のぬめりが必要、病気や体力がない、自然死した岩魚を渓流で目にする機会がないのはこれらは生存する上でのリスクの少ない地下水の中で起きていることだからではないか。
3.大水の後に岩魚が釣れなくなる現象
良く「岩魚が流された」と言うが、これに加え地下水の入口を流れてきた小石、砂が塞ぎ、岩魚の行き来を遮断することによって一時的に岩魚が閉じ込められる。これによってリスクの大きく見える水中に残された岩魚しかいなくなるのが原因ではないか。
4.大水の直前にバカ釣りができる現象
大水の出る直前に危険覚悟で釣りをすると大型岩魚がバカ釣りできることが あると良く言われる理由
1.増水で暫く餌にあり付けなくなるのでその前に食い溜めをする。
2.増水でミミズや川岸の陸生昆虫など流れてくる餌の種類、量が増える。
その他の
1.地下水への入口が埋まることを警戒してそこから出てきた大型岩魚で水中に居る岩魚の数が増える、増えたことで餌を必要とする個体数も増える。
2.水が増える、透明度が落ちることで猛禽類などからの警戒の度合いが下がり、捕食活動が活発になる。
3.底石が流水で洗われ張り付いていた川虫が流される。
5.岩魚は大水の時は小石を飲んで自重を重くし、たるみに付いて流されないように減水までやり過過ごすと言われるが「小石を飲んで」に関しては実際に何度も見た経験があるので事実荒食いの時に石を餌と勘違いして?と仮定しても平水時に小石を食べていると言う状況は見られないのでこれは不自然
自重に加えて見方を少し変えて考察すると
1.荒食いの時に餌と小石の選り分けができなくて同時に口に入れて誤食している
2.岩魚は流れに居る限り、増水の時でも頭を上流に向けて尻ヒレを動かして水流に堪えていないと流されるので上流に尻尾や腹を向けて口から物が入ることを避けることはできない。また、たるみなどで仮にそれができる状況でも土砂混じりの濁流の中では口は開ければ必然的に砂が口から入るしかし、エラで酸素を取り込むためには口から水を入れる必要があり、多少の異物が水に混じろうとも吸い込まなければ呼吸はできない。
この時、エラを通じて全ての異物が排出されれば良いが消化器官に入ってしまうのも相当量があって小石を積極的に飲んだのではなく飲んでしまったと言う見方もできなくはないのではではないか。
6.滝壺の岩魚
〜釣りをする上で滝壺はほぼ1級ポイント〜
一般的な理由
1. 川幅が圧縮され急速で注ぎ落ちるので岩魚は遡上できずに遡上止まりとなり、岩魚のたまり場所となる。
2.川幅の圧縮で餌が集まり易すい。
3.滝壺の水流が巻いていたり、澱んでいたりで餌の流速が遅いため捕食し易すい。
4.水中の酸素が豊富に加え、私の考察
(1).壺下の岩のエグレや広く深い壺、吐き出しの白泡があるなどが身を守るのに有利なため、安全なエゴなどに居ずとも餌捕りができる(特に身の保全のためのさほど必要ではないので地下水の行き来が少なく、ぬめりの少ない大型岩魚には好都合)
(2). 安全のためべた底に定位していても流れてきた餌を魚眼で察知できる
(3). 流れが緩やかでひれを動かして定位する体力が少なくて済む
(4). 流れ出しに居るリスクを承知の小型岩魚が番兵となって先に危険を知らせ、より大きな岩魚が安全に生活できる。
7.下流にダムができると魚種の棲息に変化が起きる
理由
ダム上流の流速が落ちる→排砂能力が落ちる→起伏の少ない平川になる→ハヤや山女が上れるになる、新たなハヤの住人?が卵を餌とするなど岩魚の生活環境を冒す。
そして排砂能力の問題で地下水の出入り口が詰まる、一旦詰まった物が中々吐き出されない。ダムやバックウォーターがハヤの上流域への供給場所となり、飽和状態になるまで増加の一途を辿る。
8.岩魚の魚止め
魚止めは自然環境の変化で変わる(魚止めには上がり、下がりがある)
「魚止め」の定義とは定着できること(餌を捕食し、安定して生殖行為ができる環境を言い、大水や人為的などで一時的にそこに居ることが可能になることとは違う)
9.魚止めが変わるための環境の条件とは(人為的なものは除き)
魚止めが上がる時
1. 大水後に遡上できないはずの滝が消失した。
2. 大水の時の増水で今までは遡上できなかった滝の落差が少なくなり遡上できた。
3. 大水の時に魚止めの流れ出しに流木などが引っ掛かり、せき止めてプールになる、水嵩が増して一時的に滝の落差が低くなる。
4. 雪渓の崩壊で一時的なダムができて上流の滝の落差が少なくなった。
5. 滝の落ち口から上流のルートに張り付いたヌルついた苔が大水で洗われ、岩の地肌の凹凸が出て、今まで遡上の障害だった落下の流速が落ちた
何らかの理由で魚止めの上に岩魚が移動できたとして(人為的なものを含め)
1. 魚止めを越えた、さらに上流でも岩魚が定着できるための環境があった餌、隠れ場、水量、水中酸素量があり、出水での土石流を伴う吐き出し、大雪で閉ざされ餌探しにも不自由するであろうはずの悪条件にも耐えられる
2. 釣り人などが容易には来れない環境がある。
3. かつての山棲み人達のフィールドが高齢化、離村、移住などにより放置?され、そこに新たにできた岩魚の生息地を知る者がいないため存在自体がわからない。
4. 山菜、キノコ採り、マタギなど新たな生息地を知っても無関心または良識で公にならない
魚止めが下がる時
1.山崩れ、山抜けでなどで悪水が出て中和される場所までは岩魚が住めなくなった。
2.伝染病、飢餓、他の動物の捕食により絶滅した、繁殖維持可能な個体数がいなくなった。
3.魚止めの滝壺が土砂や落石、流木、倒木で埋まった。
4、魚止めの水底の土、砂、石が洗い流され岩盤になった。
隠れ場所の消失で迫られる外敵の対応や隠れる物(「ついたて」のような役目」がなくなったことで岩魚同士が常に互いの姿が確認できることになって警戒しあい、居心地が悪い、川虫の生息環境の破壊。
5.上流部の伐採や植生変化、気候変動、万年雪の減少で水量が少なくなった。
6.水量の減少で悪水の中和ができなくなった
7.安定して供給できていた水源にその供給能力がなくなった
水脈異常、地震、地殻変動、山抜け、山崩れ、地形変化による隣接した沢への流入
尚、人為的なものは
1.魚止め領域の岩魚の釣り人、岩魚捕りによる乱獲(夜突き、刺し網、毒流し、電気)。
2.在来岩魚以外の移植放流での混血化による絶滅、体力低下、特質変化、若しくは繁殖により魚止めが下がる、上がる。他の河川や養殖物、川マス、ニッコウ岩魚域へのアメマス系岩魚放流などの種違い。
3.同じ河川の在来岩魚の放流により、魚止めが上がる。釣り人、山棲み人、保護活動家などによる。
4. 源流域の原生林伐採、針葉樹植林、林道、砂防ダム。
5.用水路、釣り堀などへの供給、ダム、発電所、護岸工事、川砂利の大量摂取による環境変化。岩魚に良い環境ほど魚止めは上がる。
10.岩魚は山女よりも冷水を好み、上流に生息する
東北の山女は関東、西日本から見たら遥かに上流域の冷水に棲んでいるのに本当にそうなのか?
山女は冷水の問題よりも前出の体表のぬめりの問題で岩魚領域には生きられないのではないか?若しくは岩魚領域を何らかの事情で離れた山女はぬめりを必要とせずに機能から手放した?
より、エゴの多い源流域にはぬめりのない山女は適合できないので上流、岩魚、その下流、山と明確な線引きはないにせよ結果として棲み分けがされているのではないか。特に東北の渓の上流域は起伏に富むゴーロでエゴが多いので本流の水量のある平川を除き、岩魚と山女が混在したり(※ないことはない)、生息域の上下が逆ということはないのではないか?
※人為的放流やダムなどの環境変化での混在の事実はあり
アメマスは例外としても山女は降海本能が岩魚よりも強く残っているのではないか?(岩魚よりも海に近い所に居るので大型化するためには海に降りた方が都合が良い、産卵遡上する鮭の性質を岩魚よりも色濃く残している?)
仮に源流の岩魚の魚止めから河口までがダムなどの障害なく行き来できたとして源流の岩魚が降海してアメマス化するかは疑問、山女は前出の理由でするはず、海アメは遡上すると思うが渓流に留まることはしない(環境適合できない)
昭和初期まではほぼ源流域まで遡上していたと言う「マス」も遡上止めまで来て銀毛が取れて定着した話は聞かない。
理由
1. 岩魚は樹木が覆い被さり、沢特有の湿気を好む、ウルイ、ミズナ、フキ、シダ類などが豊富な小沢を産卵場所として得た。また、小沢は比較的増水の影響を受け難いことで落ち葉、小枝などの堆積物があり、川石に付着した苔が洗われずに残ることも含め迷彩色効果がある。小沢はこれらが外敵の視認に障害となって産卵時に上空から狙われる確率が低くなるとともに水量や川床がナメ化し難いことで産卵した卵が流され難く大水の影響を受けにくい。
これらによって孵化し、生殖できる成魚になれる確率が他の同種の魚種と比較して低くないのでは?
疑問
1. 一旦見つかれば捕捉されやすい沢を産卵場所としたのは?ペアリング中の岩魚を何度も見たが警戒心が薄く、近づいてもなかなか離れない。余程のことがない限り、外敵警戒よりも生殖行為が優先?
警戒し、逃げていたら子孫を残す一大イベントのチャンスを逃すことになる。特にオスは他のオスと壮絶な取り合いをして掴んだチャンスだからか
岩魚が意識してそれをしている訳ではないだろうが、大げさに言えば日々餌を求めて魚体を成熟、強く、適度に大きくするのは子孫を残す行為が最終目的でそれらが人間のように快楽に興じる行為の一つと言う意味合いは全くない。
2. 海まで下って餌を求め巨大化する意義(巨大化して敵と戦い、また卵を多く抱え、子孫を残す確率を抱卵の数で高める)が薄い。岩魚とて巨大化して同様の行為ができることに越したことはないが、長距離移動時の外敵、台風、日照りなど天災への遭遇、漁網、有害排水(人為的なものは岩魚側からは想定外だが)、体力消耗などリスクも大きい。
また、巨大化することにより源流や沢での視認性が高まり、沢での場所によっては魚体が水中からはみ出し、泳ぐことが叶わず魚体をくねらせて上流を目指すことになる。これはノーガード状態で行動することになり、外敵に対しては非常に危険な行為。
3.他の魚種が住めない環境に適合することでその環境を独占できる。
以上はあくまでも私的見解としてお読みいただく為のものであって検証・論説等々につきましては誠に勝手ながらこの場を借りてお断りとさせていただきます。
悪しからずご了解の程宜しくお願申し上げます。
【筆者想い出の画像】