Others『日本の天然林を救う全国連絡会議』からのお知らせ
『国有林内の天然林を環境省に移管し保全する改革』の
署名活動のお願い
平成18年12月吉日
■『日本の天然林を救う全国連絡会議』設立の趣意
 日本人は古来自然に対し、深い畏敬いけいの念を抱いてきました。 とりわけ森を尊び、信仰の対象とさえしてきました。 「奥山」と呼ばれた森は、神の領域であるとともに、稲作の水源として、また自然災害から私たちの命を守るための存在として大切に守られてきたのです。 このことを裏付けるように 1950年代には、まだ原生的森林が日本の森林面積の 38%を占めていたのです。
 しかし、戦後復興期の木材需要をまかなうとして、林野庁がこの「奥山」の森を「ブナ退治」と称して大規模に伐採し始めたのです。 美しい森は急激にその姿を消し、 2002年には、原生的森林が森林面積の 11%にまで減少しました。 この残り少ない天然の森を林野庁は、今もなお伐採し続けているのです。

 私たちは、森の破壊をいつまでも続ける林野庁に日本の天然林の保護・保全と、国民にとって大切な自然に学び、ふれあいの場である森を維持・管理する役割をこれ以上任せるわけにはいきません。
 この際、国有林内の天然林をすべて環境省に移管して、その保護・保全を委ねるよう行政組織の改革を速やかに行うことを国会及び内閣に求めます。




林野庁による国有天然林の破壊の歴史と現状
−林野行政の継続は、日本の森を破滅に導く−

■林野庁による伐採行政と改革の失敗
四国高知県安芸郡馬路村国有林内の天然ヤナセ杉
 林野庁が 1950年に行った「森林資源の現況」調査によれば、わが国には原生的森林が 953万ヘクタール(概ね北海道と長野県を合わせた面積に相当)ありました。 それが 2002年には 278万ヘクタールにまで減少しています。 54年の間に、その 71%にあたる 675万ヘクタールという大面積が失われたのです。
 この主な理由は、林政統一(1947年)により、国有林を一括管理することになった林野庁が、国内の木材需要を満たすため「国有林生産力増強計画」(1958年)、「国有林木材増産計画」(1961年)といった路線を打ち出し、「未開発林」や「利用不能林」と呼ばれた奥地森林を皆伐して、針葉樹を植林する拡大造林を全国的に繰り広げたためです。
 この計画は、国民の財産である天然林を破壊しただけで、無惨な失敗を遂げました。 木材輸入自由化による価格の下落などから目算がはずれ、独立採算制の国有林野事業は膨大な借金を抱えて、やりくりのためにさらに大量の伐採をするという悪循環に陥りました。

 財政立て直しのため 1978年には「国有林事業の改善に関する計画」がつくられ、 1991年の第4次まで改善計画が繰り返されましたが効果は無く、 1998年には国有林野事業の累計赤字は 3兆8000億円という厖大ぼうだいな額に達したのです。 「こんどこそは」と、行われたのが「国有林野事業の抜本改革」です。 財政面では独立採算制をやめて、一般会計からの繰り入れを前提とする特別会計に衣替えし、借金のうち 2兆8000億円を一般会計などで処理して軽減を図り、事業の方針を木材生産重視から環境面など「公益的機能の維持増進を旨とする」と変えたのです。 「これで天然林を伐り売りすることは無くなった」、と国民の誰しもが思いこんだのです。
 しかし、そうではなかった。 なんと、これまで手つかずの天然林の巨木を伐採して売り払う行為を、「公益的機能の維持増進」と言いつくろっているのです。

■いつまで続くのか天然林の破壊=反省なき林野行政
 平成18年4月1日現在、国有林内には天然林は 461万ヘクタール残されています。 林野庁は内規により、原生的森林生態系を有し、貴重な動植物の生息・生育に適した森林 148万ヘクタールについては原則的に伐採を行わないとしています。 しかし、今もなお、 313万ヘクタールの奥地の天然林においては伐採が続けられているのです。 日本各地の現場を調査して、始めてその凄まじい実態が判ってきました。 伐採は、ますます奥深い山地の森にまで及んでいます。 いずれも、これまで伐採を免れてきた場所ばかりです。 原始の佇まいを今なお残す北海道の中南部、北東部の十勝、北見地方のエゾマツ、ドドマツ林、針広混交林のカツラ、センノキ、オニグルミ、ウダイカンバなどの各種広葉樹や、渡島半島、奥尻島などの北限のブナ林、青森下北半島のヒバ・ブナ混交林、秋田の天然スギ・ブナ混交林、木曽の天然ヒノキ、高知の魚梁瀬スギ林など、最後に残った飛び切り美しい日本列島各地の原生的森林でチェーンソーがうなっています。

 「抜本改革」後の 5年間(1999〜2003年度)の伐採量を見ましょう。広葉樹はブナ 12万3千立方メートル、ナラ類(ミズナラ、コナラなど) 32万5千立方メートル、カツラ 4万3千立方メートルなどを含め 213万9千立方メートルが伐られました。 針葉樹では天然秋田スギ3万7千立方メートル、木曽ヒノキ 9万7千立方メートルを始めとして 1万1千立方メートル、サワラ 4万4千立方メートルなどが、天然林で伐採されてしまったのです。

 伐採理由は、「老齢木を択伐して森を健全化するため」と、林野庁は科学的根拠を欠いた説明をしています。 伐採によって「公益的機能を増進させているのだ」、という強弁しているのです。 実態は抜き切り(択伐)とはほど遠く、めぼしい大木を狙い撃ちに伐っています。 北海道渡島半島のブナ林では、なんと直径が 20cm以下の若木までが伐採されていました。 さらに伐採方法が乱暴極まりない。 重機のための作業道が山肌を削って造られ、伐採木を引きずって運び出すので、土壌層はめちゃくちゃに撹乱されているのです。 森の再生には、土中の種子(埋土種子集団)や土壌動物、枯れ葉を分解する微生物の働きなどが欠かせません。 しかし、そうした配慮などまったく見られないのです。

■天然林は環境省に移管して守らせる −根本的な改革が緊急に必要です−
 度重なる改革でも、林野庁はみずからその行政を改善出来なかった。 巨額の税金を投入して行われた抜本改革後に、改革で決められた法のルールに違反する天然林伐採を続けている。 このような林野庁に対しては、国民から“レッドカード”を突き付けるしかありません。 天然林の保護・保全業務からの退場命令です。 林野庁に天然林を任せるわけにはいかないのです。 天然林保護行政を根本から変える以外に、もはや天然林を守る道はないと考えます。

 この際、林野庁には天然林から完全に手をひいて貰いましょう。 代わりに、環境省内に「天然林課」を設け、そこに国有林内の天然林をすべて移管して保護、保全、管理に当たらせる。 これが私たちの提案です。 さきに成立した「行政改革推進法」によって林野庁の改組がすでに決まっています。 それに沿って林野庁は新たな「独立行政法人・緑資源育成機構(新称)」に移行し、これまでに植林したスギ、ヒノキ、カラマツの人工林を育成し、木材生産に専念して貰うことが必要です。
 天然林は、「生物多様性条約」の締結国としての責任を果たすためにも、環境省(天然林課を新設)へ移管し、その保護・保全を確実にするとともに、自然学習の場として、また自然との触れ合いの場として持続的に維持していくことが最も賢明な施策であり、この国の未来に明るい光を灯すものとなりましょう。 次世代、次々世代のために、これが最もよい解決策であると確信します。

 これにより、環境省は、地球規模での環境問題と生物多様性の保護・保全をしっかりと視野に入れて、天然林の維持・管理・利用に取り組んで貰いたいのです。

■天然林461万ヘクタールは不伐の森に
 日本列島に現在残されている“天然林”は、もはやわずか 461万ヘクタールしかありません。 このなけなしの“天然林”は、決してこれ以上手をつけない「不伐の森」としなければなりません。 と同時に、伝統的な利用(commnity forestry)を含めた、触れ合いの場としての、自然の摂理を学びながら、かつ持続可能な自然との接点の場として確保することが大切です。 国内の世界自然遺産指定地域では「保護」を主目的とし、厳正な自然環境の維持・管理が行われていますが、一方で登山や渓流釣りなどを通して自然に学ぶ機会を国民に担保することも非常に大切なことです。 言うまでもなく、国有林は国民の財産です。 原生度の高い自然に触れることによって得ることの出来る一人ひとりの感動と、そこで磨かれる感性こそが、将来の日本に豊かな森と文化を残す原動力になると信じます。

■天然林の環境省移管を国会、内閣に請願します −具体的な行動計画−
 桁外れの“生物多様性”に富み、世界に冠たる日本列島の、私たちの大切な財産である“天然林”を、未来の世代にバトン・タッチすることは、現代に生きる私たちすべての大きな責務です。国有林に帰属する天然林461万ヘクタールすべてを「環境省」に移管て守ることを求める請願書を、署名を添えて衆議院議長、内閣総理大臣に提出します。
 なにとぞ私たちの趣旨にご賛同いただき、ご協力いただきますよう心からお願い申し上げます。


 【請願事項】
1. 林野庁が所管する国有林内の天然林をすべて環境省に移管していただくこと。
2. 国民の共有財産、国有天然林のこれ以上の伐採を、直ちに中止していただくこと。
3. 地元生活者による山菜採取等の伝統的権利を保障し、誰もが自然に触れ合うことのできる、
国民に開かれた国有林保護政策を実施していただくこと。
 「日本の天然林を救う全国連絡会議」
http://www.geocities.jp/tennenrin461/
<代表世話人> 河野昭一
(国際自然保護連合生態系管理委員会・北東アジア担当副委員長、大規模林道全国ネットワーク代表、京都大学名誉教授)

<連絡先> 事務局 : 長沼 勲、渡部康人
967-0004
福島県南会津郡南会津町田島字後原甲 3432
TEL : 0241-62-2674
FAX : 0241-62-2688
E-mailはこちら

<請願および署名呼びかけ人>
(五十音順)
青木淳一(横浜国立大学名誉教授)、安渓遊地(山口県立大学国際文化学部教授)、安渓貴子(山口大学講師)、五十嵐敬喜(法政大学教授)、井口 博(弁護士)、池澤夏樹(作家)、石 弘之(北海道大学特任教授)、石川徹也(山を考えるジャーナリストの会代表)、市川守弘(日本環境法律家連盟理事、弁護士)、市川利美(ナキウサギふぁんくらぶ代表、弁護士)、梅原 猛(哲学者)、岡村 健(フリー・ジャーナリスト)、奥原充幸(早池峰の自然を考える会)、梶谷敏夫(丹沢ブナ党代表)、加藤彰紀(大規模林道全国ネットワーク事務局長)、加藤 真(京都大学院人間環境学研究科教授)、加藤幸子(芥川賞受賞作家)、金井塚 務(広島フィールド・ミュージアム、「細見谷の自然を守る会」代表)、佐高 信(経済評論家)、C.W.ニコル(作家)、杉島 洋(広島フィールド・ミュージアム)、清野聡子(東京大学院大学院・総合文化研究科)、瀬畑雄三(釣り師)、高橋淳一(高山の原生林を守る会代表)、田村義彦(大台ケ原・大峰の自然を守る会代表)、寺島一男(大規模林道問題北海道ネットワーク代表)、東瀬紘一(博士山のブナ林を守る会代表)、根深 誠(登山家)、野田知祐(作家・カヌーイスト)、原戸祥次郎(森と水と土を考える会・代表)、星 一彰(福島県自然保護協会会長)、松田まゆみ(ナキウサギふぁんくらぶ、十勝自然保護協会)、望月達也(岩手県ブナ帯調査室クマゲラ研究班)、諸橋 潔(新潟県自然・環境保全連絡協議会代表)、吉川宗男(哲学者、ハワイ州立大学名誉教授)

−署名に関する注意事項−
署名活動 一次〆切 2007/3
署名は専用の用紙(B4サイズ)をご使用下さい。
用紙はこちらからダウンロードしてください(pdfファイル760KB
署名は自筆でお願いします。(署名はメールでは受付できません。)
署名用紙の提出は、上記連絡先に郵送でお願いします。
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