テンカラとは、現在では『和式毛鈎釣り』を総称して使われているが、元来テンカラとは、木曾地方を中心とした地域における呼称であった。20年程前までは『てんから釣り』と紹介されていたが、釣りメディアや釣具メーカーによって、現在では釣法も含めた総称として『テンカラ』へと統一された感が強い。
釣り文化の中では“職漁師の釣り”、“伝承の釣り”といわれ、極一部の愛好家達によって楽しまれてきた。難解で難しいとされてきたテンカラであるが、現在ではビデオやDVDなどのメディア、そしてインターネットの普及によってノウハウや知りたい情報を簡単に手に入れることがきるようになり、“土着の釣技”から“一般的な釣り”へとスタイルを変化させ浸透している。
釣法としては、短竿(3〜4b位)にテーパーライン(3〜5b位)、ハリス(1〜1.5b位)に毛鈎1本という シンプルな仕掛を駆使して、毛鈎を水面、もしくは水中を流して渓魚を釣るのである。
そもそもテンカラとは、温泉宿などの注文主の要望に応え、渓魚の型と数を揃えなければならない職漁師達に選ばれ、そして受け継がれてきた釣法である。手返しが早くて効率が良く、そう難しくないからこそ職漁師に選ばれた釣り方なのだと思う。「毛鈎の周りで魚の姿が見えたら合わせろ」とか、「ヤマメは0.2秒で毛鈎を吐き出す」など、テンカラは”神秘的で難しい釣り”とされてきた感があるが、実際は簡単でシンプルな釣りなのである。
先程「テンカラは簡単でシンプルな釣りだ」と述べたが、意外にもシステマチックな一面がある。そのシステマチックな面に囚(われすぎて、竿やライン、そして毛鈎にばかりウエイトを置きすぎると、かえってテンカラを難しくしてしまう。
テンカラとはどんな釣りかと聞かれれば、簡単に言えば「毛鈎をヒョイッと投げて流れを流し、渓魚が出たらヒョコッと合わせる釣りである」と言うことができる。
そしてテンカラの魅力は、何といっても“渓魚を眼で見て掛ける”ことにある。渓魚が潜んで居そうな流れの筋を、自分で巻いた毛鈎を流して、「ここで出る!」と思ったポイントで渓魚に毛鈎を銜(えさせ、そして渓魚を掛ける。これがテンカラの魅力なのである。私が思うに、テンカラとは限りなく面白く、痛快この上ない釣りなのである。
それでは、ここから“これから始めるやさしいテンカラ”と称して、新しいテーパーラインによるテンカラを紹介していくこととする。
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